htomine と インターネット と 生活

htomine (とみね) の生活について書きます。

私の2018年と自作キーボード Part1

この記事は 自作キーボード Advent Calendar 2018 - Adventar 2日目の記事です。

2018年は自分にとって自作キーボードに魅了された一年となった。
キットは6台ほど作りまだ2台ほど積みがある。たくさんのイベントに出たり、いくつかはイベントを開いたりもし、界隈に知人も増えた。ちょっと前にはキーキャップ欲しさに?台湾にも行った。

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ハマる過程を通して沼の一端を見てもらえるのではないかなと思うので、まずはそれをまとめてみようとおもう。
なお長くなったのと、期日に間に合ってないのが辛いので Part1 として一旦放出する。。。

書いたキーボード: crkbd v2.0α / Cherry Silent Red + Aliaz Silent のキメラスイッチ(45g) / MDA BigBang keycap / nilpo ケーブル

はじまりは Let's Split

昨年末、メカニカルキーボードが欲しくなった。
当時 kickstarter に出ていたX-Bowsというエルゴノミックキーボードに目をつけてBackしていたものの順調に遅れていたため、何かないかなと探していたところ、Let's Splitというキーボードが目に留まった。
左右分割キーボード自体は職場でもErgoDoxに手を出している人が何人かいて認識はしていたけれど、三万円からの高級キーボードに手を出す怖さと、HHKBにすら感じていた「キー数少ない/配列が独特なところ」から手を出すには至っていなかった。

「レツプリ」が良かったのはまず私にとっては値段だった。総額でもErgoDoxなどに比べればお安いのはもちろん、パーツごとにばらばらと買うことで気持ちとしては実質無料と言えるため心理的なハードルがぐっと下がった。完全に沼にハマる奴特有の低下した思考力である。

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なぜか印刷されているル●ンについては気にしないでください…

当時すでにレツプリはビルドログも多くあったが、正真正銘の初心者にとってはパーツひとつとってもそれがなんなのかもわからない有様で、いくつものログを並行して眺め、少しづつ理解しながらパーツを集めていったのを思い出す。
半田付けへの苦手意識もあり、部品が揃って組み立て始めるまでにしばらくかかった。

ビルドに関してはたくさんの記事を読み込んだことで、幸いにも初手でありがちなミスをせずにすんだ。スイッチプレートを挟み忘れたりProMicroの向きを間違えたり、、といったもの。また、半田付けも思ったよりは難しいものではない、という感触が得られたのもよかった。実際中学以来だったので、それまでは何か怖いものという感じで苦手意識が強かった。

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レツプリでは以前から気になっていたCherryのSilent Redをチョイスした。
軸の選択基準についてはあまりイメージもなかったのだが(それもメカニカルキーボードに手を出しづらい要因だった)、会社用にするつもりだったので、静音軸ってのがあるのか、それは良いなと記憶に残っていた。

キーキャップも死ぬほど悩んだが、当時買ったPixel2のPanda colorの配色が気に入っていたので、グレー基調に差し色としてオレンジをワンキーいれる、という形で落ち着いた。キャップについては何日もPimpmykeyboardやAliを彷徨って決めたが、あれはいつやってももどかしくも楽しい作業で、無限に時間が吸われる。この時はグレーの微妙な配色を狙ってカラーチップとにらめっこしたが、在庫の関係もありその点は敗北した。

数字行が欲しい… Irisに手を出す

出来上がったレツプリは早速オフィスで使ってみた。コンパクトな筐体にお気に入りのキーキャップ、調色可能なLEDもとてもいい。Silent Redの打鍵感も一発で気に入って「もうこれEnd Gameってやつじゃね?」と感じた。愚かな初心者である。。
ところが実戦で使い始めてすぐ「数字行ないのきっつー!」ということに気づく。
レツプリは四行しかキーの行数がないので、数字やファンクションを入力したければレイヤーキーを使うことになる。これが思いの外厳しかった。例えば英数混じりのパスワードを打鍵するときのような、慣れたものであるほどいつもどおりの配列で打てないことにストレスがたまる。
一発でパスワードが通らないことが続いて流石にこれはキツい、という感想となった。

ここで「なら行数多いやつ作ればよくね?」となるのが自作キーボード沼の楽しいところ、いや、怖いところだ。色々考え、レツプリを買ったkeebioで売っていたIrisに目をつけた。

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Irisは親指あたりの形状にErgoDoxの雰囲気を残した、親指部分を入れて実質5行分のキー配列をもつキーボードだ。 これならば数字もレイヤーに収めずにそのまま打鍵できるし、そのほかにも厳しいと感じていた右手右端あたりの記号類の配置にも余裕が出る。これだ!ということですぐに発注した。

一方で、Irisのプレートの形状はあまり好みではなかった。レツプリもそうなのだが、どうもプレートタイプはミニマルではあるがモノとして少し物足りないというか、いかにも自作!という感じがするなあと考えていた。レツプリはとくに高さがあるので、そう感じたのかもしれない。 そこで目に留まったのがこのケースだった。

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これは3Dプリントケースで、プレートと違って一体感のある形状であり、高さのあるフチがキーキャップ側面まで覆っている。手元のレツプリと違って製品っぽさがぐっと高まっていて、完成度の高いものに見せていた。 これだ!ということで、どうやって実現するかを検討し始めた。 当時家に @interestor の買ったレーザーカッターが届いたころであり、これを使って似たようなケースがつくれないかな、と考えていた。3Dプリンタもあったのだが、ベットのサイズ的に出力は難しそうだったからだ。

オリジナルケースの制作

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レーザーカッターの使い方を教えてもらいながら、試作を進めていった。 先のケースは3Dデータが公開されていたので、今回のケースの印象を決める部分でもある、キーキャップを囲む縁どりの部分をスライスするように切り出し、Iris公式の積層タイプのプレートに、飾りの層として重ねて貼り付けることにした。
また、たまたま家に貼るタイプの木質シートがあったこともあり、木目調のケースデザインとすることも思いついた。

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手に入りやすいMDFの厚さのバリエーションと、家のレーザーカッターでカットできる厚みとの関係もあり、何度もカットしては重ねて雰囲気を確かめた。家に機材があると、この工程は比較的気軽にできるのでとても良かった。
レーザーだとどうしても積層させることになるので、ケースの側面がどうしても不恰好になる。レーザーによって焦げた断面が意外と木目の風合いと合っていたのでこれはだいぶマシになったが、本来は重ねたあとにヤスってならして塗装して、、を繰り返すとよいはずだ。

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肝心の組み立てをやる気がなかなか起きず、結局8月にあったMaker Faire TokyoのDiscordブースへの参加を決めたことをブーストにしてなんとか完成させることができた。

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今度の Iris では Gateron の Silent Red をチョイスした。静音軸はレツプリでだいぶ気に入っていたので、Gateronに変えるとどう変わるだろう、ということで選んだものだ。
結果としては多少カスカス感が強いもののほぼ同じ印象で、オリジナルケースのポクポクした打鍵感と相まってかなり気持ちの良いものになった。

「慣れ」の強さ。 数字行遠くね…?という気づき

オリジナルケース付きIrisは無事MFTでも展示でき、めんどくささからくる仕上げの甘さは気にかかるもの、2台目として相応にこだわって製作することができた。
こちらも早速職場に持ち込んで使ってみたのだが、これまたすぐに気づいた点がいくつかあった。

まず、あれほど欲しがってIrisを作るきっかけとなった数字行。Irisの制作がケースの関係もあって3、4ヶ月(いやだいたいサボってただけだが)かかってしまったこともあり、その間にレイヤーを使った数字行の打鍵にもだいぶ慣れていた。
結果、「数字行、ホームポジションから遠くて打ちづらい…」という感想を得てしまう。。
あれほどタイプミスの多かったパスワードも今ではほぼノーミスで打鍵できるようになっており、せっかく組み上げたIrisでは活用しきれないキーとなってしまった。
また、Irisの親指位置にくるキーは1uを二つ配置したものの、上側のキーは指が届きづらく打鍵しにくかった。

打鍵感は申し分なく、見た目もこだわった。今度こそ『End Game』か!と思ったのだが、使えば使うほどこうしたい、ああしたい、というところが見えてくる。
これが沼か、ということを実感することになった。

さらなる沼に触れた MFT2018, tokyomk5

春頃にあった技術書展やHHKBのファンイベントでは遠巻きに自キ勢を眺めて仲間になりたそうにそっちをみているのが立ち位置だった。気づけばTwitterは自キ勢一色のTLとなっており、MFTはじめイベントに顔を出すようにもなっていた。
イベントに行くとみな自分の自慢の愛機を持参してくる。だいたいがこんな感じの会場となる。

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キーボードはやはり物理的なデバイスなので、触ってみないとわからないことがたくさんある。キーの配列、スイッチの感触、キーキャップのプロファイル…。
なかなかすべてを触ってから購入、とはいかないのだが、こういうイベントにいくとそれが触れてしまう。
Irisが思うようにハマってくれなかったこともあり、やはりもう一台…という気持ちがもたげてくる。
そんなとき MFT で出会ったのが、crkbdHelix Pico だった。

つづく