バーチャル受肉で一足お先に身体から魂を解放しよう:VRoidで魂の器を作り、受肉したアバターでclusterの大地に立つ
こんにちは、最近寒いですね、皆さんSFは好きですか?私は好きです。
アン・レッキー『叛逆航路』
- 作者: アン・レッキー,鈴木康士,渡邊利道,赤尾秀子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2015/11/21
- メディア: 文庫
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皆さんこの作品は読まれましたでしょうか。 2015年に話題となったSF作品で、現代の我々とは異なる価値観の文化を持ついくつかの種族の間で起こる事件を描いた作品です。注目されたのは作中における「性」の取り扱いでした。
アン・レッキー Ancillary Justice(邦題『叛逆航路』)の世界では、ラドチという名の星間国家が人類宇宙の大半を支配している。ラドチの文化(とその言語)では、ジェンダーで人を区別しない。それは無意味なことと見なされているのだ。英語で書かれた本作中では、ラドチ人に対して(多くの場合で非ラドチ人に対しても)記されている性別の手がかりとは関係なく女性代名詞"she"を全面的に用いることで、言語的なリアリティを持たせている。
Webミステリーズ! : 「彼女はたぶん男だろう」――あらゆる登場人物が女性形で呼ばれるアン・レッキー『叛逆航路』、5カ国語でどう訳す?[2015年12月]
ジェンダー論的な視点でというよりも、そうした概念が変更された文化がどうなるのかといった思考実験としても面白い作中世界観でした。
あるいは、「they」を使う習慣
また、現実の英語圏の一部では、性的に中立な代名詞としてhe/sheではなく「they」を使おう、という話も上がって久しいですね。
「They」は「私」 LGBTが変える英文法の常識|日経カレッジカフェ | 大学生のためのキャリア支援メディア
実際どうなのというところはまぁそんなに追ってないのでわかっていませんが(薄い)、個人的には非常にSF的というか、マクロに人類史を見ているような感覚があって面白く感じました。
私は、世の中がSF的になっていくこと、その世界で生きていることに純粋にワクワクします。
いま、バーチャルに受肉するということ
先日某氏に「Vをやっていくならいま、受肉する必要がある」という話をされました。本当は色々文脈があるけど割愛の上。 正直なところあんまり受肉ということについては興味がなかったというか「美少女になるといってもV活動をやれる気はあまりしないし、そうするとなる意味はあまりないよなあ」「正直美少女なりたいか??自分は美少女ではない(ゲームでは自分の性別のキャラクターをビルドする、なぜなら俺が主人公だから派)」くらいに考えていたのですが、その話を聞きながらぼんやりと「VRで人が普通にやっていく時代の先駆けとしての受肉ってあるのか」という気持ちになりました。昨年来V界隈はそういう自認もあって盛り上がっていた(特にのじゃろりさんの文脈では)と思うのですが、改めて自分もその中にあるのだということが分かりました。
先の性の話もそうですが、基本的に人間は自分の物理身体に人格を宿らせていると思います。 めちゃくちゃにバッサリと人間の苦しさを表現するならば、そこから逃れられないことが挙げられるのではないでしょうか。 自分の身体性を自由に切り離すことができる(もちろん、切り離さなくてもいい)時代に生きている、それでいてV業界にやってきたのであれば、それはもう「受肉」しておかないのは、目の前に月に行けるチケットがあるのに掴まないようなものでしょう。
というわけでVRoidで魂の器を想像していく
とはいえ自分にはキャラクターイラストの能力もなければ、キャラクターモデリングの経験もありません。 しかし2018年は素晴らしい、VRoidがあります。
この記事は一応でも cluster advent calendar 2018 の一環ですので、界隈の方が購読している可能性が高いと思うと言わずもがなとは思いますが、VRoidとはpixiv社が開発した魂の器を製造するソフトウェアです。 以下のように、ゲームのキャラクターメイキングをもうちょっと高度にしたような温度感でキャラクターモデルを作成できます。
VRoid Studio - the first 3D character design software for illustrators
まずはこちらで器を作ります。 大まかにいって、
- 顔
- 髪型
- 体型
- 衣装
といった設定項目が存在します。
デフォルトではこのようなかたちです(これは少し顔を編集した状態)。 よくあるキャラエディットを思い浮かべてもらえれば感覚がわかるかと思います。 髪の毛に関しては先の動画のように直感的に毛束を生やすことができ、私のようなキャラクター絵を描いたことがほとんどない人間でもそれらしい格好を作ることが可能です。
2018年なので他者の創作物を活用する
とはいえ…正直なところサンプルアバターをいじった以上のものを作ろうとするのは初心者にはハードルの高いものです。 そこで、2018年の私たちはインターネットに公開されているテクスチャデータを活用することを考えます。
このように、現代ではBOOTHなどを中心に3Dモデルなどのデータが多数配布されており、しかもPayPalで簡単に著者に還元することができます。良かったですね。 というわけで、こうした中でVRoid用のテクスチャも配布されています。
【VRoid】瞳テクスチャ20種セット - Shin Itagaki - BOOTH
例えば上記は瞳のテクスチャセットをダウンロードし、置き換えてみたものです。 結構雰囲気が変わり「あ、魂感じてきたな」という気持ちになるのではないでしょうか。
服や小物などの自由度はまだちょっと低め
ちなみにVRoidの服に関しては、基本的にプリセットで用意されている「制服」「ワンピース」に対してテクスチャを貼る形で実現します。 そのため自由度の高いデザインが可能、というよりは、決まった型紙でどんなデザインを実現するか、といった世界観となっています。 とはいえ、バージョンアップで着々と機能追加・改善も進んでいるようなので今後は自由度も増えていくことでしょう。
【VRoid用テクスチャ】制服着崩しアレンジv1.01 - KI_MOTOR_SHOP - BOOTH
さて、今回は上記のデフォルト制服を着崩したような衣装を着てみました。BOOTHではブーストといって、配布の金額に上乗せして支払いが可能です。もっとサイバーでSFチックな衣装も増えてほしい!という思いも込めて少しですが上乗せしていきます。こうしたクリエイター向けのサービス設計はpixivさんならではですね。
2018年の力でひとまず器が出来上がる
というわけで、下記のようになりました。
今回は紫をテーマカラーとしたい思いがあるので、各種アセットも紫をベースにしたものに調色しました。簡易ですがキャラクターのイメージに手軽に寄せることができて便利ですね。お化粧は奧さんに教えてもらいました。 前述の通り私はSFが好きなので、もっとサイバーでパンクな感じの衣装や小物も考えていきたいところです。ですがまずは器があれば、受肉することは可能。 以下のようにポージングをして撮影することができるので、そのままでもとても楽しいです(ポージング手づけ時間が溶ける)。
というわけで、ひとまず器になるVRMアバターが用意できました。コミュニティの創造物も活用させてもらいつつ、好みの顔、好みのデザインの魂の器が手軽にできてしまう、それが2018年というわけです。 自由度の点で言えば自分で何らかのモデリングソフトを利用した方が、これはこれでコミュニティーにはたくさんの利用可能なアセットがあるため、より自分好みのアイデンティティを発揮したアバターが作成可能かと思います。しかし、私のような未経験者にとってはなかなかハードルが高いもの。 まずはVR時代に飛び込むための、自由に動ける体を得るのだという点に関しては、VRoidの手軽さと自由度のバランスは素晴らしいと思います。
「受肉」する
器はできましたが、とは言えこれではまだ「受肉」とは言えないでしょう。 ポージングさせて画像を撮ったところで、あくまでそれは器、人形でしかありません。 「私」がこのVRMアバターとなって生きてこそ、受肉と呼べるのかと思います。
ここについては人によって様々にやっていく方向があるかと思います。 突然自分を語ると、私は人が集まる場を作ってそこを自分の居場所とするのが習性です。ですので、バーチャル空間での受肉についてもまずはそうしたアプローチで触れていくのが良いかなと考えています。 具体的にはイベントを開くことで人を集め、より人間を受肉文化に放り込んだり、距離の概念を捨てされるバーチャルコミュニケーションの体験を広めていくのが直近やりたいことと言えそうです。 というわけで予定調和的ではありますが、最近転職した会社が提供するサービスであるところの cluster にて、このアバターを使えるようにしてみます。
VReducer を使って、VRoid製のアバターを cluster に適合する形に
現在のところ cluster では、ライブ配信時の負荷対策の一環として、また、ライブ環境で正常に動作する状態を担保するため、カスタムアバターにはいくつかの制限があります。VRoidでエクスポートしたVRMデータをそのまま cluster に読み込んでエラーが出た場合は、VReducerというソフトウェアを利用すると良いかもしれません。(ちなみに、公式にオススメ、ということではなくあくまでとみね個人の話です)。
導入方法は→などを参考に: VRoidのアバターをVReducerでcluster用にコンバートしてみた
VReducerを通したVRMデータを、 https://cluster.mu/account/avatar からアップロードします。
その際下記のようなエラー(一例)が出た場合は、VRoidに戻って対処が必要です。
'[{"Code":"TOO_LARGE_COUNT","Resource":"image","Message":"image count is too large.","Meta":{"actual":hoge,"max":16}}'
仕様としては アバターの制限 - cluster SDK ドキュメント|cluster(クラスター) などを参照していただければと思いますが、髪の毛のボーンが多すぎる場合や、不要なカラーやテクスチャが多い場合などでエラーが起きるようです。今のところ髪揺れなくすと概ね通りそうです。 以下の記事ではよくある事態についてわかりやすく解説してくださっています。
さて、うまくいけば
こうなって
お、、
というわけで無事、受肉の第一段階を突破することができました。はいかわいい! 弊社では週次の全体ミーティングを cluster 上で実施しているので、これで来週からバーチャルな存在としてより強固にミーティングに参加することができるようになりました。
終わりに
だいぶ迷走した感じの記事になってしまいましたが、バーチャル空間にオリジナルのアバターで降り立つことができました。 正直に言えばまだまだ器の造形が足りないというか、魂を預けるにはアイデンティティがうまく乗せられていないなと思うので、もう少しそうした点にこだわった作り込みをしていくつもりです。
単なるソフトウェア上のアバターとしてではなく、自分の魂を仮託する存在としてのVRアバター。今、2018年の最後に一足早くSF的な人間の在り方に手を伸ばしてみるのはどうでしょうか。